作品概要
- 田中一光には、確固たる「スタイル」がある。ひと目見るだけでそのデザイナーだとわかる、何か。作品をデータとして捉え、解析することで、偉大なグラフィックデザイナーが生み出してきた作品の「アルゴリズム」が浮き彫りになるのではないか?
- 本作品では、田中一光が手がけた作品から、約1600点のグラフィックを解析した。解析したデータは配色、構成、<感性>。それらの解析結果からデータビジュアリゼーションを制作している。
配色
グラフィックデザインは、配色によって複雑な意味を作り上げていく。
色における「絶対音感」を持つと言われる田中一光の配色の解析を行い、
グラフィックデザインにおいて、これまではっきりと言語化されていなかった配色パターンを導き出し、【配色】を視覚化する。
映像解説
- 解析の結果をデータ・ビジュアリゼーションで表現した。代表的な色使いを抽出する為の、1600枚に及ぶデータ量の解析に使用したアルゴリズムを順を追って視覚化している。具体的には、グラフィックデータのRGB値からLab値への変換過程、クラスタリング過程のデータをモチーフとして使っている。
- 代表的な色使いを説明するには3D空間に落としこむことで誰がどの時期にどのような色使いが多かったのかなどが一目で分かるといった利点や、Lab値が3次元の値であった事などが理由にあり、田中一光のアプローチ方法を、3Dオブジェクトの色や形の違いによってビジュアライズした。3Dオブジェクトの色は、抽出された代表的な色使いを現し、体積はその使っている比率がそのまま反映されている。
構成
鑑賞者は、面分割や言語といった造形要素によりグラフィックデザインからメッセージを受け取る。
造詣要素全体で人が視覚的注意を誘起しやすい領域や文字組を解析することにより、これまで気づかれにくかった構成パターンを導き出す。
映像解説
- 「視覚的注意を誘起しやすい特徴・領域の定量化」と「テキストレイアウトの抽出」の2段階の構成で1600枚に及ぶデータ解析の過程を映像化した。また、全ての作品を数理統計的に解析することで得られた作品群を代表する視覚的注意特性を作品それぞれに深度として適用させ、本来意図しなかったであろう作品の歪みや明暗がでるようにした。
- あくまでもコンピューターによる解析、統計結果だが、それを元々ある作品に対して掛け合わせる事で予期せぬグラフィックが出来上がった。
感性
グラフィックデザインが知覚に訴える美しさや心地良さは、数値化された情報だけでは成立し得ない。
【配色】、【構成】においてそれぞれ解析されたデータを元に、鑑賞者に感じ取ってもらえるものがあるよう、感性を表現する。
映像解説
- 色彩の変化は、四季の変化のようにも見え、また、同じ景色であっても、全く異なる感慨を得られることもある。
これらの景色は、自然界で起こっていることに着想を得ているので、音に関してもより自然な振る舞いをさせる必要があると考えていた。
- そこで、音は映像と相互に関係させ、映像内で起こってることに合わせて、リアルタイムに音を生成したり、音のきっかけによって映像に変化を与えたりしている。
制作者クレジット
- Director: 木村 浩康
- Creative coder(感性): 堀井 哲史
Creative coder(配色・構成): 田中 陽
Editor: 本間 無量
- Programmer(データ解析): 登本 悠介
Project manager/Designer: 藤井 かおり